aichikenminの書斎

20代サラリーマンが、読んだ本と、心に残った言葉、その時考えたことを徒然なるままに書き留めたもの(金融、理系、工学、航空機、読書)

【読書】何者/朝井リョウ 就職活動とSNSという身近なものをテーマに、人が何者であるかを問いかける。

あなたは一体何者だ?

何者 (新潮文庫)

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主人公、拓人はもうすぐ就活生となる。

彼のまわりにも就職活動をする人が4人。

彼らは集まって一緒にがんばっていこうと気持ちをひとつにする。

 

しかし、徐々に彼らの関係は変わっていく。

SNSでの発言や、他人を批評するような言動

面接の場における、嘘で飾ったような発言を通して、徐々に距離は離れていく。

 

他人を見ている分にはただの傍観者になれる。

しかし、自分は本当に傍観者であるのか。

当事者でない理由などどこにもないのだ。

 

 

後半にかけて、読者も当事者の輪の中に引きずり込まれる。

見たくないものを見ないために、信じたくないものを信じないために、

必死に言い訳をして、目をそらすという行為をしていることに気付かされる。

 

 

不安定な現代の中でもがく

「あんなに狭い場所に大勢の人が並んで座っているのに、体感的には全くあたたかくない」

夜の地下鉄に乗る主人公の発言。

いかに物理的に近くにいようとも、他人は他人。

地下鉄という場所は匿名性が高く、寂しさを感じる。

寂しさを紛らわすために、携帯をいじったり、本にのめり込んだりするのだろう。

寂しい人から、何かをしている人になるために。

 

「足を組まないと、何かが安定しない気がした」

足を組んで座っていることは多い。

自分を大きく見せたいからだろうか。

強がって見せたいからだろうか。

他人が足を組んでいるところを見ると、そう思ってしまうが、

自分も知らず知らずのうちに足を組むことが多くなった。

自信のなさの表れだろうか。

 

カッコ悪くてもあがけてますか?

「十点でも二十点でもいいから、自分の中から出しなよ。
自分の中から出さないと、点数さえつかないんだから」

完璧を求めるがあまり、結果を恐れる。

結果が悪く、自分が傷つくことを怖がる。

過程では頑張っている、その過程を知ってもらいたがる。

すべては自信がないから、自分が何者でもないことを知らされるのが怖いから

 

「就活は終わったけど、俺、何にもなれた気がしねえ」

いい会社に就職すると、勝ち組であるかのごとく扱われる。

でも、それはただの肩書にすぎない

会社のブランドにすがって、満足しているだけ。

本人に価値はない。

そこから抜け出すための勇気が欲しい。

 

「痛くてカッコ悪くたってがんばるんだよ」
「カッコ悪い姿のまま本当にあがくことができている人を見るのが怖いから」

自分は自分以外の何者にもなれない。

それを自覚しながら、理想の自分に近づけていく。

自分をカッコ悪いといえることこそ、強い人なのだ。

地に足つけて、前に進んでいる人を見る勇気

傍観者にならず、見習おうとする勇気。

 

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