【読書】七つの会議/池井戸潤 仕事をするのは何のためか?ノルマを達成することが目的か?
半沢直樹、下町ロケットで大人気の池井戸潤
今度は中堅メーカーの中に潜む問題を描く
トップの実績を誇る営業課長が、ある日パワハラで訴えられる。
その後、不可解な人事が断行、何が裏にあるのか。
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今回の話は、8つの章に分かれており、それぞれ視点が異なる。
どれも東京建電というメーカーに関係のある人間の視点。
東京建電の営業課長から取引先のねじメーカー社長。
その後、東京建電に勤めているOLの視点、そして・・・。
様々な方向からの視点を読者は俯瞰的に眺める。
すると断片的だったものが繋がり、大きなひとつの絵であることが明らかになる。
仕事をするということはどういうことか。
営業のノルマを達成することが至上命題ではない。
ノルマは目的ではなく、手段である。
所詮数字は数字なのだ。
だが、それを過度に追い求める人々が多くあるのも事実。
本書の隠された真実は、資本主義に染まりすぎている会社で容易に起こりうることだ。
会社に尽くすことの恐ろしさ
「しがないサラリーマンというトロッコに乗って、ときに急カーブに翻弄されつつ、振り落とされないよう、必死でしがみついてきただけだ」
課長のおじさんのセリフ。
いつの間にか、しがみつき、離れることができなくなってしまった現状を述べる。
組織に染まってしまう、寄りかかってしまう。
だが、いつその寄りかかっている会社から見放されるかはわからないのだ。
「会社にとって必要な人間なんていません」
「期待すれば裏切られる。その代わり、期待しなけりゃ裏切られることもない」
いなくなっても代わりの人間が出てくるだけ。
それが組織というものであるし、組織の論理である。
だからこそ、会社にすべてを捧げるようなことは、リスクでしかない。
尽くしてあげれば、会社は裏切らない、そんなのは幻想である。
あなたは何のために仕事をするのか?
「オレは魂まで売る商売はしたくない」
ノルマのために不正を働く人間に対するセリフ。
企業は個人に物を売って利益を上げる。
強引に売りつけても、企業の中にいる個人は組織を盾に逃げ隠れする。
果たして本当にそれでいいのか。
組織の中にいても、一個人であることを忘れてはならない。
「仕事っちゅうのは、金儲けじゃない。人の助けになることじゃ」
作者が一番言いたかったことではないだろうか。
いつの間にか、利益を求めることが正しいことという妄想が蔓延っている。
だけれども、本来は人の役に立つことでお金をもらう。
論理が逆転していることを、盲目的に信じるような組織が伸びる世の中はおかしい。
いつまで資本主義に頼り切るのだろうか。
人は群れると駄目になる
「虚飾の繁栄か、真実の清貧か」
ごまかして、嘘をついて得られる利益で本当に満足するのだろうか。
いや、そんなわけはない。
正しいことをする、そのために集団を組んで、組織になって、会社になるのだ。
会社になった途端に、誤魔化しや嘘にまみれるなどということはあってはならない。
法人格には、自然人と同等の権利が与えられているが、本当に人格的な働きは全くできていないのだ。