【読書】魔法の色を知っているか?/森博嗣 人間は、どこで間違えたのでしょうか?
人間は、どこで間違えたのでしょうか?
魔法の色を知っているか? What Color is the Magic? (講談社タイガ) 新品価格 |
チベットの奥にある、外界から隔離された特別居住区。
ハギリは学会に参加すべく、その地を訪れる。
その地では、いまも人間の子供が生まれている。
そう、他の地では一般的に、ウォーカロンの子供ばかりなのだ。
なぜ、彼らは人を生むことができるのか。
人間の寿命が永遠と呼べるほど長く、そして人工知能を有するロボットのウォーカロンが当たりまえに存在する200年後の世界。
天才と呼ばれる博士、真賀田四季の影もちらつく。
驚くほどの現実味を帯びて投げかけられる本作。
未来はこのようになるのだろうか。
寿命が伸びた結果、生が希薄になった
「この頃は、生きているのがどうも実感がないね。不思議でならない」
人間の寿命が伸び、博士は160年以上も生きている。
だからこそ、死が遠いものになり、それゆえに生の実感もなくなる。
ハギリは、不思議に思うことこそ、生きているからであると返答する。
そう、自分の中に考える事、感じることが残っているから生きているといえるのかもしれない。
ウォーカロンの創始者、マガタ博士
「彼らの頭脳には、ずっと眠っているサブルーチンがある」
マガタ博士はウォーカロンの頭の中にプログラムを組み込んだと推察する。
通常は働かないが、ある条件を入力することで働く、安全装置のようなもの。
ウォーカロンが普及するゆえに、何かしらのバックストップが必要だった。
人間が作るがゆえに管理する手段も埋め込むことができた。
科学者という職業の幅を広げなければならない。科学者以外もそう
「政治的な争いになるごとに、科学者は肩を竦める以外にないのが常だ」
科学は未来を作るというだいそれたことを言う。
だが、何か問題が起きてしまうと、そしてそれが政治的なものであったりすると、彼らは何もできない。
この発言は著者からのメッセージではないだろうか。
いままでの科学者の範疇から抜け出し、より大局で物を見ない限りは永遠にその構図からはぬけだせない。
そして科学者以外もそうだ。
一人一人がより広くの物事に通じてなければならない。
世の中が広く繋がった結果、一つ一つは薄くなった
「現在の社会は、あまりにも複雑で、一部の局所で血が流れても、たちまち応急処置がなされる。代替のもの、別経路と、あらゆる手が迅速に打たれて、影響を最小限にする」
今の世界は、唯一と考えられるものが非常に少なくなってしまった。
だいたいなんでも別ルートから入手することができてしまう。
それは便利な世の中になったという一方で、少しだけ寂しさも感じる。
より関係がドライになってしまったとも言えるから。
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