【読書】首折り男のための協奏曲/伊坂幸太郎 「もし、その時に、神様が見ていればね」
「綺麗に並んだ作品集というよりは、謎の工芸品」
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テレビで報道される殺人事件。
被害者は首を拗じられ、殺されている。
犯人の姿は伝えられるものの、未だ捕まってはいない。
そんな中、隣人に怪しい男が。
彼が犯人ではないかと疑う老夫婦。
そして、いじめにあっている中学生は、その彼に助けられる。
同じ頃行われた合コンでは、その殺人事件が話題に登る。
また、もうひとりの登場人物として、泥棒の黒澤がいる。
彼は伊坂作品の至る所に登場する。
ナビゲーターのような役割なのかもしれない。
黒澤は、昔の恋人を探してほしいと頼まれる。
これは、隣人を疑っていた老夫婦から。
そして別の日に、高い絵画を盗んで欲しいと頼まれてしまう。
泥棒黒澤、罠にはめられてしまうのだろうか。
本作は、短編が7つ。
その中に紛れ込んだ、首折り男と泥棒。
彼らを通じて物語は、時にクロスし、混ざりあう。
これが伊坂ワールドの真髄ではなかろうか。
素直な人に出会うことが少なくなった
「俺に伝染したんだ」
「誰かの役に立ちたい病」
男はこう語る。
まるで、いい人みたいに。
困っている人を助けることが善である。
そんな当たり前のことを当たり前にできる人間は意外と少なかったりするのだ。
ロマンチックにひっくり返される
「ずっとこの男の僕の舟に乗っていたわけだな」
黒澤が語る、昔の恋人の真相。
彼女は昔から水兵リーベの歌を歌っていた。
そして、気づいたらずっと僕の舟に乗せられていたのだ。
なんだかロマンチックな、それでいてどんでん返しもある。
それこそ、伊坂幸太郎。
愛国ゆえに、何をするか
「愛国者で戦争反対、ってポジションはアリですよね」
右翼、左翼、発言が過激化している昨今。
ただ、国を愛しているからこそ、戦争しないように。
戦争は何も産まない。
人が傷つくだけなのだから。
テレビとは一体、何のためにあるのか
「テレビってのは何だかんだ影響力が大きいくせに、しかも、その効果を深く考えていないようで、腹が立つ」
黒澤と話している友人はこう語る。
テレビに対して責任を持てと。
彼らが報道することは必ずしも珍しいことではない。
多分に恣意的なものが働いている。
それを踏まえて人は情報を理解しなければならない。
面倒な仕組みになってしまったものだ。
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