【読書】変身/東野圭吾 人はいつ死ぬのだろうか
今回のテーマは脳移植
理系作家の真骨頂、科学ものです。
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主人公は、世界で初の脳移植手術により一命を取り留めた患者。
別の人間の脳の一部を移植したところから物語は始まる。
後遺症もなく順調に回復していたと感じていたところ、
今までにはなかった趣味、思考が彼の中にあらわれるようになった。
徐々に、自分の意識が失われていることを感じ、
自分の頭のなかに共存しているドナーが誰なのか探し始める。
人は、いつ死ぬのだろうか。
意識がなくなったとき、自分の意志で考えることができなくなったとき、
それとも心肺停止になったときだろうか。
身体は動くのだが、自分じゃなくなってしまったら。
綺麗に線を引くことなんて誰にもできない。
しかし、尊厳というものを考えれば、その人らしくということを考えれば・・・。
考えることの重要性を教えてくれる一冊。
「脳が機械と最も異なる点は、その機能を発揮するために、自分自身を変化させていくことである」
臓器移植の際に、ドナーと患者の間における適合性が必須となる。
通常の臓器の場合は、適合していればいい。
ただし、脳の場合は、自分自身を変化させていく。
外部からの影響により変化するのだ。
そう、共存している場合は、その相手からも。
機械のように単純に置き換えるだけではいけない、心というものがあるから。
「まるで身体が機械の一部になったような気分だ」
工場の生産ラインで作業をしている際の主人公の言葉。
無味乾燥な仕事を任され、頭のなかを無にしなければやってられない。
人間には人間らしい仕事というものがある。
機械には機械にふさわしい仕事がある。
昨今、人工知能の発達により、仕事が奪われると恐怖心を煽っているが、
いま存在する非人間的な仕事が機械に置き換わるのであれば良いではないか。
精神衛生上良くないんだ、人間らしく仕事できないということは。
「あんたに想像できるかい?今日の自分が、昨日の自分と違うんだ。
そして明日目が覚めた時、そこにいるのは今日の自分じゃない。」
自分の意識が失われ、奪われていくときの主人公の叫び。
夜寝るときに何も不安にならないのは、明日起きても世界は変わっておらず、
自分も今の自分から連続して続いているという安心感があるから。
不連続になる恐れがあれば、怖くて眠ることができない。
いつ死ぬかもしれないという恐怖心との隣り合わせであるから。
「馴れるとは、諦めるということでもある」
最良ではない現状に馴れてしまって、そこから更に高みを目指すことを諦める。
そういう社会人は多い。
なぜなら、一度レールを外れたら元に戻ることは非常に困難な社会であるから。
そして、まぁいいかと思える程度の現状を与えてくれるから。
それが給料なのか、楽な仕事なのかは人それぞれであろうが。
もう少し、人が自由にやりたいことを目指せるような社会に、
目を輝かせて仕事をしている人が増えるような社会に、
自由に発言ができるような社会になればいいと思うんだけども。
それが一億総活躍社会ではないだろうか。
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