【読書】グランドマンション/折原一 「不気味の谷」がこの作家の本質を表す
顔の知らない隣人たちと繰り広げる不思議な物語
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グランドマンション一番館には変わった住人がたくさん住んでいる。
元サラリーマン、元公務員、三世代同居家族から独居老人。
そして住人たちの間で様々なトラブルが巻き起こる。
短編が8つ入った本作。
一つ一つの話にトリックが仕組まれており、終盤になり糸が繋がる快感を得られる一冊。
そして短編たちはすべてつながっており、最後には、そういうことか!と唸ること間違い無し。
一見どこにでもありそうなマンションの話、だが、現実とは似て非なるもの。
現実でありそうだけれども、どこか違う。
叙述トリックの名手が、そんな世界を楽しませてくれる。
隣人がどんな人か知っていますか?
「隣に誰が住んでいるのかわからない」
都会のマンションでは、近隣住民の顔すらよく知らない。
乾いた関係によってマンションは構成されている。
しかしながら、人の気配はする。
知らないからこそ、不気味に思えてしまう。
暗闇を怖がるのは子供だけではないのだ。
「身寄りがなく、一人寂しく死んでいく老人たち」
世の中には人が溢れている。
すぐ隣に人が住んでいるのに気づかないことだってあるのだ。
世界がもう少し優しかったら、人がもう少し暖かかったら。
どうすれば雰囲気というものが変わるのだろう。
オンとオフの切替で人は人らしく生きていける
「一日中、家庭のことで頭を悩ませていたら、自分がだめになってしまう」
人は気を休める時間が必要だ。
四六時中つねに気を張っていることなどストレス以外の何者でもない。
自分が心休まる瞬間、リラックスできる瞬間というのを作らねばならない。
それこそが、人が人らしく生きていくためのコツでだと思う。
小説は現実とは違うが、現実に限りなく近づけることもできる
「小説は虚構である」
虚構の中に、物語を組み立て、土台と成るものを創っていく。
著者は叙述トリックを得意としており、視点による変化というものを織り込んでくる。
信じていたものが崩れ去り、その向こう側に見えるものは、何なのか。
そう、急にマンションがなくなっていたりするのだ。
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