【読書】ガソリン生活/伊坂幸太郎 僕たち自家用車の言葉で言えば、ガルウイングドアの気分だ
今度の主役は緑色のデミオ
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舞台はまたも仙台。
今度の主役は緑色のデミオ。
車たちの視点から人間世界を見る。
車も人間も、総じて魅力的な彼らが事件に巻き込まれる。
大人びた小学生とどこか抜けた兄弟。
主人公のデミオは彼ら兄弟の家の車である。
彼らの前に現れた女優、そして記者。
その女優は浮気相手とともに事故で亡くなってしまった。
だが、ダイアナ妃の事故と同様に不可解な点が多い。
小学生の弟がいじめられ、長女の彼氏は怪しげな仕事をさせられる。
一見別々の事件達だが、ゆくゆくは・・・。
善良な市民が、事件に巻き込まれながらも、徹底的に抗う姿が力強く描かれる本作。
最後には暖かな、幸せな気分になる一冊。
失敗を恐れてはならない
「人間のやることの九十九パーセントは失敗なんだ。だから、何にも恥ずかしがることないぞ。失敗するのが普通なんだからな」
「失敗するのを死ぬほど恐れているのは、自分を最高に格好いいと思っている自惚れた人間なんだ」
失敗することを恐れる人が多い現代。
挑戦しなければ失敗は起こらない。
ゆえに保守的になってしまう。
だけど失敗をするのは当たりまえなのだ。
当たりまえだと思っていれば、気軽に一歩踏み出すことができる。
とても優しい言葉。
「もしかしたら必要になる時があるかもしれないからと何でも保留にしちまう」
だからこそ無駄が増えてしまう。
車たちはクラクションのことを不要だという。
ただのいらだちをアピールするためのものだからだ。
クラクションの音を聞くと、嫌な気分になる。
皆そうであろう。
本来である警笛の役割を果たしきれているのだろうか。
大人になって退化してしまうこと
「人間ってのは自分の発言や覚悟はすぐに忘れちゃうんだよ」
言った当初は本気。
だけれどもだんだんと忘れてしまう。
本来の意志はどこにあったのか、自分はどこに向かっていたのか。
時々振り返って確認することが必要なんだろう。
「大人のやり方はつまんねえぞ。
事前の調整やらバーターやら、ようするに利益を持ちかけて、自分の要求を押し通すパターンだ」
交渉とは結局はこういうこと。
自分の要求と相手の要求を考え、落とし所を探っておく。
落とし所を探すのは辛いし、虚しい作業だ。
でも仕事ってそういうものなのかもしれない。
車ならではのフレーズ
「お手上げの気持ちになった。僕たち自家用車の言葉で言えば、ガルウイングドアの気分だ」
このフレーズが一番好きだ。
ガルウイングドアの気分、一度使ってみたいフレーズ。
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