【読書】ドンナビアンカ/誉田哲也 刑事ものの殻を被った純愛の物語
報われて欲しいと願いながら、無事であって欲しいと願いながら読み進める物語
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外食企業の役員と従業員が誘拐された。
事件を追うのは女刑事、魚住。
身代金の受け渡しは失敗し、犯人の姿は見えない。
また、同時並行で別の視点、別の時系列の話も進行する。
初めて恋をした中年男性。
恋い焦がれ、辿り着いた先には地獄が待っていた。
それらをつなぐ中国人女性、まさに白い少女。
報われて欲しいと願いながら、無事であって欲しいと願いながら読み進める物語。
サスペンス物のなかに、純粋で綺麗な愛が見える。
経験がモノをいう
「自分の感覚を信じられなければ、捜査なんて何一つ進められなくなってしまう」
ベテラン刑事の言葉。
長く仕事をやっているとやはり経験というものが身についてくる。
専門性というのだろうか、独自色というのだろうか。
やはり組織の中でも光り輝くことの出来る人間は、何かしらのオリジナルなものを持っている。
ベテランが無条件で偉いわけではないが、ベテランにはベテランの強みがあることは間違いない。
若い人間はベテランの本質を理解し、ベテランは無駄に威張り散らさないこと。
それこそが良い組織を創っていくのではなかろうか。
自立するということ
「誰かに手を引っ張ってもらうより、自分の足できちんと歩く。
いつのまにか、そういう生き方が身についてしまった」
人に頼らずに生きていくことに慣れる。
例えば一人暮らしで生活をしていたり。
でも時々、人恋しくなることはある。
徐々に慣れるのだろうか。
自分の足できちんと歩くことができるようになるのだろうか。
時々は休んで、誰かの世話になって、また立ち上がって歩いて行く。
そんな人生がいいのかもしれない。
自分を信じられるのは自分
「たったそれだけの理由で、自分という人間を、肯定することができたんだ」
自分を信じること、自分を理解してあげること。
自分をやたら卑下する人が増えてきたように思う。
もしかしたら卑下するふりをしているだけかもしれないが。
自分を認めてあげることから自信は生まれ、その自信に裏打ちされた態度が、他人から認められることに繋がるのだろう。
まずは自分が自分を認めること。
そこから始めなければならない。
このセリフは、物語のクライマックスで純愛の様相を呈する場面で現れる。
刑事ものとは思えない、綺麗な情景を見せてくれる。
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