【読書】ドキュメント銀行 金融再編の20年史 - 1995-2015/前田裕之 銀行ってなんだろう?
銀行とは何か
![]() |
新品価格 |
銀行ってなんだろう。
普通の人にとって、預金口座がある、ATMでお金を出せる、振込をする。
そして、預金をしてても利息は雀の涙ほど。
だからお金を預けておく金庫のようなイメージ。
しかし、銀行も株式会社であり、上場している会社も多い。
ということは、株主のために稼がなければならない。
もちろん従業員のためにも。
銀行は貸出をしている。
預金者から集めたお金を元に、貸出をしてそこから金利収入を得ている。
ここでポイントなのは、預金者から集めたお金を少しだけ残して、あとは貸出をしている点。
そして貸出の金利を得て、経費を引いて、少しだけ預金者に利息を還元している。
よくよく考えてみると、預金者は銀行にお金を貸しているのだ。
もちろん、一定の額は保証されているから安心ではあるのだが、
貸している先の銀行のことをもっと知るべきであろう。
ドキュメントというと事実の積み重ねで、面白く読めることは少ない。
だが、この本は章ごとに経営者に焦点を当て、物語のように読ませてくれる。
非常に興味深く、また知識欲も満たしてくれる一冊。
「銀行は預かったお金を貸し出しだけでは運用できていない」
現在の経済環境は、資金余剰の時代。
事実、国内の銀行では預金残高が約700兆円に対し、貸出残高は約520兆円(2015/3末)。
となると、どうなるか。
安定した会社に向けては、金利競争により金利を下げる方向に進むが、
業績低迷中の会社には多少のリスクをとり、高い金利で貸すが、貸し倒れてしまう恐れも高い。
後押しされるべき会社にお金が回らないという状況になる。
銀行は、預金の金利は確実に支払わなければならないため、
貸出の条件や可否を見極める目を持っていなければならない。
それが銀行員の力だろう。
「与えられた経営資源をフル活用し、できる限り収益を拡大しようとする資本の論理に従う大手企業が、
特定の地域にこだわり、地域のために行動することができないのは当然でもある」
人が少ない地域や成長が見込めない土地においては、資本という巨大な力により地域のために働くことができない。
公共というものには、資本の論理から独立しているが故に価値がある。
すべての大手企業が資本の論理に従う必要はない。
資本の論理から脱却する会社が増えても良いのではなかろうか。
特にインフラに近いような業種においては。
資本を増やすよりも消費者と向き合うことが大切なのではなかろうか。
市場と消費者の乖離を感じるのは、市場が世界に広がりすぎて、身近な生活と切り離されすぎていることが原因だろう。
「経営改革の基本は心の改革」
従業員の意識を上げることこそ至上命題。
過去のしがらみだったり、成功体験に縛られていたりと人によって違いはあるが、
きちんと従業員が一丸となって前を向いて進んでいる会社はどれほどあるのだろうか。
大きい企業になればなるほど、自分一人なんて大したことないからテキトーにやってもばれないというように考えがちではないか。
チームの一員というよりも、不特定多数の傍観者になってしまう。
「日本では、いったん出来上がった制度や仕組みを変えるのが、いかに困難であるか」
既得権益という言葉が跋扈していることからも容易に想像できる。
過去からの完全な脱却は難しい。
ゴリ押ししてでも変えてやる。
トップがどれだけ引っ張れるかが肝なのではないだろうか。
「銀行は基本的にはどこも同じ業務を手掛けているので、そもそも合併がしやすく、
かつ規模が大きくなるほど利益を出しやすい収益構造だからだ」
銀行業でみた場合、差別化は非常に難しいということだ。
そして大きければ利益も出やすいという、ある意味インフラと一緒。
逆に言えば銀行が数多く存在する意味はあるのだろうか。
業務の専門性というところに焦点を当てて、差別化の戦略を取らなければ、消えるのは時間の問題だろう。
「銀行は自らリスクを抱え、証券会社は投資家にリスクを負わせる」
この違いが一番わかりやすい。
銀行に預けている預金は、銀行に運用を任せているお金といえるかもしれない。
そうすると、銀行がどんなところに融資しているのか気になってくる。
特色の強い銀行があれば、金利以外で銀行を選択する理由もできるのに。
「今時、銀行になりたいと思う者はいない。みんな金融サービス機関になりたがっている」
差別化戦略がなければ生き残れないと、貸出先の企業には口を酸っぱくして言っている銀行だが、自分の本業に差別化をもたらすことが、これから直ぐに求められるのだ。
例えば、航空機業界にガンガン融資します。という銀行があれば僕はそこに預金する。
例えば、出版業界や本屋に積極的に行きますという銀行も魅力的だ。
そういう独自色が欲しい。