【読書】文学部唯野教授/筒井康隆 怪しげな教授の文学についての講義を受けよう
大学教授の日常をコミカルに描く
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唯野教授の日常を描く本作。
日常を描きながら、唯野教授が講義をする。
文学批評の講義を。
コミカルな日常の中に、急に文学論が入ってくる。
語り口は、コミカルそのまま。
中身は非常に濃密な学問である。
哲学、形而上学といった様々な分野を内包した一冊。
唯野教授はペンネームを使って、小説を書いている。
そして授業の中でその小説に関して肯定的な話をする。
後半になると、筒井康隆という名前も出てくる。
唯野教授なのか筒井康隆本人なのか、狭間で揺れ動く面白さ。
大学と社会との隔たり
「大学というのは一種の反世界でさ、社会で認められるのと反比例して、大学ではどんどん疎外されていくの」
大学教授である唯野教授の発言。
教授がテレビに出て目立つことをすると、大学内では疎まれる。
社会と対極に立っているのが大学という意識が未だに存在するのであろう。
逆に、社会の側がもう少し学問の方に寄って行ってもいいのかもしれない。
文学以外にも当てはまる
「批評ってやつは、批評しやすいものを選んで批評するんですよね」
これは非常に興味深い言葉だと思う。
批評を批判と読み替えてもいい。
分かりやすいものに安易に手を伸ばす大衆と同じである。
難しくて理解できないから避けるのではなく、正しい方向へ向かう意識というものを忘れてはいないだろうか。
「こうやって人間てのは、自分の意志にかかわりなく流されていくんだなあ」
書いていた小説が、賞を受賞し、名前を隠していたのに、それがマスメディアによって暴かれたときの唯野教授の発言。
人一人が、流れに逆らったとしても、大きな集団という力に流されてしまう。
大きな集団を動かすものは、それに見合った分別を有していなければならない。
自分が行動をしたことで、何が起こってしまうのか。
バタフライエフェクトではないが、ある一人の人間の他愛もない行動で天変地異が起こるかもしれない。
「面白さなんて、そもそも教えにくいものなんだけど」
いろんなものの面白さを伝えるのって非常に難しい。
なぜだろう、人それぞれ感性が違うからなのであろうか。
興味がある人に伝える分には良いのであるが、さほど興味がない人に聞かれる際はどう答えるか迷ってしまう。
お互いに気を使い合うというのもなかなか疲れるのであるが、興味が無い話を聞かされ続けるのも疲れてしまう。
だからこそ、趣味が合う人と仲良くなれるのだろう。
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