【読書】天才株トレーダー 二礼茜 ブラックヴィーナス/城山真一 経済を使った正義を見せつける
本作はいわば経済版ブラックジャックである
天才株トレーダー・二礼茜 ブラック・ヴィーナス (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) 新品価格 |
この一文に惹かれて買ってしまった。
というのは、そもそも経済という言葉に、金の亡者という意味が含まれているように感じているからだ。
だから、金儲けと正義は相反するもの。
人間を救済することなど果たしてできるのだろうかと。
そんな疑問を持ち崩してくれるのではと考え、読み始めた。
物語は地方公務員の百瀬と二礼の出会いから始まる。
株取引の天才、黒女神こと二礼は、金と引き換えに依頼人の最も大切なものを要求する。
その要求する大切なものと欲しいお金を天秤にかけ、相手に対し選択を迫る。
何が何でもお金を欲しいのか、その覚悟はどこにあるのか。
リターンの代わりに彼女は考える時間を与える。
何のために金が欲しいのか。
その理由を知ってからではないと彼女は動かない。
金融で働く者に対する心構えを教えてくれるのかもしれない。
本気を求める人間は、本気なのだ
「顧客の真剣度合いを見極めるために、顧客にとって最も大切なものを報酬として要求する」
彼女は本気の人間に協力をする。
そして手助けをする。
だからそれが嘘であってはならない。
覚悟のある人間に対して、彼女は力を与える。
それがまさに人助けなのだ。
寄り添えなければ何が人助けか
「雨の日に傘を持っていない人に傘を貸したいんだと」
黒女神の信条がこの一文である。
よく銀行は揶揄される。
晴れの日に傘を売りつけ、雨の日に傘を持っていく人。
それが銀行員だと。
それに真っ向から立ち向かう。
そういう人間に彼女はなりたい、とそう思っているのだ。
業績が良くない企業に金を貸すのは難しい。
でもそのハードルを飛び越えてこそ光が見える。
成長をさせるということは、その芽を見極める人でなければならない。
果たして今の世の中に、どれぐらいいるのだろうか。
国のために働けるか
「世界に対していい顔をしてみせる以前に、私は政治家として国を守る義務がある」
こういう発言ができる政治家はどれほどいるのだろうか。
政治家は何のために働いているか。
人によって、多種多様な答えが返ってくるのではないかと僕は思う。
日本のために働いている人間が一体何割いるのだろうか。
私利私欲ではなく、本当に青臭く、この国を良くしたいために働いている人はどれだけいるのだろうか。
そしてそれを見定めることは、果たして有権者にできるのだろうか。