aichikenminの書斎

20代サラリーマンが、読んだ本と、心に残った言葉、その時考えたことを徒然なるままに書き留めたもの(金融、理系、工学、航空機、読書)

【読書】Another/綾辻行人 <死者>は誰?だまし絵に酔いしれる。

地方にある中学校の三年三組、そこにある机に書いてある

Another(上) (角川文庫)

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三年三組は特殊な問題を抱えている。

そのクラスは「死に近い」と言われている。

そこで起こる不思議な出来事。

事情を知らない転校生の主人公は放り込まれる。

 

主人公は眼帯をつけたクラスメイトに出会う。

だが、彼女は周りから無視されている。

クラスメイトたちはこう言う。

「いないものの相手をするのはよせ」
「その子って、本当にいるの?」

なぜ彼女は無視されているのか。

そもそも自分にしか見えていないのではないのか。

そのまま疑心暗鬼に陥る。

 

次第に明らかになる秘密。

そのクラスには死者が混じっている。

そしてクラスの関係者に死が訪れる。

 

主人公は徐々に考える。

自分が加わった死者ではないのかと。

「ぼくのせいで。ぼくがこの学校に来たせいで」

 

猜疑心に囚われながらも事件は起こり続ける。

そして、最後に待っていた真相に驚愕する。

唸ること間違いなし、その瞬間こそが楽しみであろう。

著者が描く「だまし絵」に酔いしれる

学校という密室で上手く生き残るためにどうするか

「要は、何か気に喰わない問題があっても目をつぶって、うまくみんなと協調していきなさい、ということ?」

主人公は転校生、転校に際して親しい人からのアドバイスを受ける。

学校という閉鎖的な空間で上手くやっていくには、事なかれ主義に徹することが一番である。

目立つ人間は嫌われるか、疎まれるか。

なぜか飛び出た杭を皆で引きずり下ろすことが当たりまえになっている。

不思議な空間。

決して学校という場所を嫌いなわけではないが、毎日上手くやっていくためには迎合することが求められる

果たしてそれは正しいことだったか、大人になってから思い返すことは多い。

社会に出ても、学校のころと同じレベルの人も多少はいる。

大人になりきれていない大人たち

少なくとも子どもには思ったことを思ったままに発言して欲しい

そんな世の中になるといい。

 

 

空っぽなもの、足りないもの

「人形は虚ろ。身体も心も、とても虚ろ・・・空っぽなの」

虚ろなものたちはそれを何かで埋めようとする。

自分に無いものを、自分の存在する軸を、他者に求める。

自分の軸を持っていない人間と全く同じ。

他者に迎合して、トレースして、真似をするだけ。

虚ろな存在にならないためにも我々ははっきりとした軸を持ちたい。

 

自分の考えを持つ

「みんなが求めてるみたいなそれが、そんなに大事なことなのかなって」

皆はつながりを求める。

だが、見崎は異なる考えをもつ。

無理にでも繋がりを求める姿勢を彼女は疑問視している。

そう、他人に迎合するということは繋がりを維持するということ。

繋がりが断ち切れることを恐れている結果である。

本来繋がりというものは、自然発生的に生まれるものであろう。

自ら無理やり作るものではないのだ。

 

世界の平和は均衡の上に成り立つものか

「見せかけの平和。誰もがそれを自覚していたに違いない」

事件が度重なるクラスのなかで、ほんの少し平穏が訪れる。

訪れたように感じているだけかもしれない。

皆が気づいていながらも、誰も口にしない。

言葉にすることで現実になってしまうのを恐れるから。

事件だけでなく、世の中の間違ったことに対しても、そのようなスタンスを取ってはいないだろうか。

 

人を信じるかどうか、何で判断する?

「彼女が訴える真実を、無批判に受け入れてしまってもいいのか」

他人が言うことを信じるかどうか。

それが客観ではなく、主観だけでしかないとした場合、人は何で判断をするのだろうか。

人柄、いままでの振る舞い、その程度しかない。

少なくとも客観的に判断できるものに関しては、無批判でありたくないものだ。

 

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