aichikenminの書斎

20代サラリーマンが、読んだ本と、心に残った言葉、その時考えたことを徒然なるままに書き留めたもの(金融、理系、工学、航空機、読書)

【読書】AID 猟奇犯罪捜査班 藤堂比奈子/内藤了 汝が深淵を覗くとき、深淵もまた汝を覗き返している

ほんの少しのことで、人は過ちを犯す

AID 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子 (角川ホラー文庫)

新品価格
¥699から

藤堂比奈子シリーズの3作目。

ドラマを見てハマり、小説もテンポよく読み進めてきて、ついに3作目まで来た。

この作品まで含めても、やはりホラーカテゴリに入っていることで、目立たなかったのではないかと危惧する。

それだけ面白い、それだけ考えさせられる。

そんな作品だと思う。

 

本作の主題は自殺志願者が集うインターネットのサイト。

趣味嗜好が現れるネット履歴、そこにある周期ゼミという動画

 

都内の霊園で死体が爆発した。

その死体は自殺、そして死に至る過程が動画として記録されており、さらにはネット上にアップされていた。

動画の名前は周期ゼミ。

謎だらけのまま話は進んでいく。

 

捜査を続けていくうちに、関連する自殺が見つかる。

そしてその背後には自殺志願者が集うサイトが。

そのサイトを運営しているのがAIDと呼ばれる人間。

 

自殺方法にもパラコートと呼ばれる手に入りづらい薬品という共通点が見つかる。

その薬品は30年前のある事件にも関連していた。

今回の事件との繋がりも気になる中で、事件は進む。

まさかという犯人、そして動機。

 

人が道を踏み外すのは、本当にちょっとしたことが原因であったりする。

それに本人は気づいていないのだ。

なぜなら自分が過ちを犯していると思っていないから。

人にはそれぞれの繋がりがある 

「その一人は誰かの父であり、夫であり、息子でもあり、そうして誰かの知り合いで、友人だったはずなのだ」

自殺死体を目にして比奈子は考える。

自殺した本人は死んで、それで終わりである。

だが、まわりの人間は違うのだ。

人は繋がり合って生きている。

一人が死ぬことで、周りにも非常に大きな影響があるのだ。

 

 

集団の中にありたいと願う人間たち

「人間って、どんなに虚勢を張ってみても、所詮は寂しがりやだから」

人は繋がりを求める。

なぜなら集団行動を好むから。

集団として進化してきたのだから。

誰かに認められること、気にかけてもらうことを欲している。

 

余裕が無い心が余裕が無い世界をつくる

「空間がないのではなく、自分の気持ちにゆとりがなかったのだ」

長野から出てきた比奈子は都会に溶けこむまでに時間がかかった。

人に溢れている東京において、空間そのものが狭いと感じていた。

だが、それは自分の気持ちがそうさせていただけ。

人の気持ちというのは体感まで変えてしまうから不思議だ。

 

人は飲み込まれる

「マイナー思考のマイナー路線に真っ向から挑んでいく相手ってのはさ、ま、それが商売だとか変態とかじゃない限り、メンタルに響いて、そうそう長くは続けられないものだよね」

人は、つらいものを見過ぎると、その人自身も引きづられていく。

人間の闇の部分を見続けるとどんどんそちらに引き込まれる。

深淵を覗く時に、深淵もこちらを見ている。

 

後悔だけでなく思いを共に

「故人の命を自分の生き様に置き換えて、私たちは生きなきゃならない」

比奈子は友人の仁美を思い出しこう思う。

そして、犯人の歪んだ正義感も含め、こう思う。

なぜならば、死に直面することの多い警察官だから。

そして、人間だから。

人は死んでも、心の中で生きている。

その人の精神は残り続ける。

 

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