【読書】リヴィジョンA/未須本有生 航空機産業ならではの官民にまたがるさまざまな思惑とやり取り
軍事が絡んでくる航空機産業のお話
推定脅威で松本清張賞を受賞した元航空機エンジニアが書かれた本。
MRJの初飛行も近づいてきて航空機熱が高まってきた。
主人公たちが熱い、しびれる小説。
価格:1,620円 |
航空機産業ならではの官民にまたがるさまざまな思惑とやり取りを生々しく感じられる。
主人公は国内第三位の航空機メーカーエンジニア。
戦闘機の改修をするにあたって、提案から根回し、思わぬところからの横槍。
一つのものを作るために、技術以外の余分なものにこんなにも体力を割かれるのかと。
「日本の防衛構想はいかにして脅威の侵攻を阻むか」
ステルス機・無人機との思想の違いにハッとした。侵攻されてから阻みにいくのか、侵攻される以前に無力化をするのか。ここにも日本の安全保障、憲法の思惑が見て取れる。
「少数精鋭のチームで市場開拓と新規事業立ち上げなんて言うんだけど・・・」
うーん、確かに。学生のときに読むのと社会人になって読むのでは感想が異なる響き。超絶エリートが担当しそうな話ではあるけれども、社内のはみ出し者が集められるのが実際。
「官公需は見栄とか形式ばかりにとらわれて、本当に必要な物に目が行かない」
形式にとらわれることで見たくないもの、取りたくない責任から逃れることができるという事なかれ主義。
「パターン化された生活に埋没しているサラリーマン」
朝、満員電車に詰め込まれ、心を無にし、ストレスと闘いながら出社。日常業務と面倒な雑務をこなし、何を成し遂げたかわからないまま帰る。サラリーマンのイメージはこんな感じだったし、だいたいあってると思う。経営者が上にいる、上司が上にいるからやりたいことだけってわけにはいかないことが多々。辛いけど、たまには達成感が感じられるといい。
「航空機メーカーなんて、飛行機固有の部分を除けば他の会社が造った部品の寄せ集め」
「真の国力や企業の力を計る一つの指標は自前でどれだけしっかりしたスペックが作れるか」
これは響いた。スペックを作ることはそこに至るまでにどれだけ試行錯誤して多くのものを創ったかという積み重ね。スタンダードを作ることの大切さと大変さを噛みしめる。
国や大企業が多く関わることでいかに無駄なことが生まれるのか。
そして本当にいいものが隠れてしまうのか。
本質を見極めることの大切さを再認識。
こんなのも書いてます。