【読書】握る男/原宏一 何を求め駆け上がるのか
鮨職人が成り上がっていく姿を描いた社会小説
本屋で目についたタイトルに惹かれて購入決定。
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鮨職人が成り上がっていく姿を描いた社会小説であり、社会風刺でもある。
ただのサクセスストーリーではなく、何を求め駆け上がるのか。
そして駆け上がったあと、何を得られるのか。
面白さとともに、疑問を投げかけられる一冊。
売れるための大事なのは格なのだが
「格づくりは競争とは別次元のところにある。
格さえ定まってしまえば競争などしなくても、客も金も自然に集まってくる」
最近の商品にうっすら見え隠れすると思う。例えばiphoneが流行っているのもこの一種ではないだろうか。
確かに格というか、持っていることによるステータス意識というものか、それがあれば、無条件で購入する人が多いと思う。
価格競争とは違う軸で攻めることが今の日本には必要ではある。
ただし、本当にいいものが失われるようになってはいけない。
頑張る人の後押しをすることが銀行の役割
「どれだけ将来性がある人にも事業にも、担保がなければ融資しない姿勢は間違いではないかと」
銀行の姿勢に対する登場人物のコメント。
銀行だけでなく、金融機関は保身しか考えていないことがよく描かれるが、
僕は銀行って多少貸し倒れても良いんじゃないかと思います。
何を狙って貸し出して、何が原因で駄目だったかはっきりしていれば何も問題ないのでは。
頑張る人の後押しをすることが銀行の役割でしょう。
「銀行なんてものは踏み台にすぎないんすから」
いまの過度に保守的な銀行のスタンスを考えると、この考えは必要だと思う。
銀行にとってはずっと融資先と一生をともにする必然性なんてないのだから。
教育による均一化の弊害
「学校の勉強ができたやつほど馬鹿なんだ」
今の教育が均質化する兵隊をつくり上げるのみになっているという批判が感じられる。
兵隊は何も考えないで、上から言われたことを忠実に実行していく。
そうすると国家は今の利権はそのまま維持されるので、地位を脅かされることもなくなる。
目指すところはどこか?
「権力を極めるためだけに突き進んでいく恐ろしさを感じます」
いつの間にか成長することではなく、突き進むことが目的になってしまい、何のために頑張っているのか、わからなくなっていることってあると思う。
現代の時間に追われるような生活の中では、じっくり考える時間が失われている。
立ち止まって考えることは必要不可欠なのに。