【読書】何もかも憂鬱な夜に/中村文則 犯罪と死刑、そして生と死
より鋭敏に緻密に繊細に
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施設で育ち、刑務官として働いている僕。
二十歳の未決囚を担当している。
そこで彼は思う。
自分と未決囚はどこか似ているところがある。
自分の今までを振り返りながら、自殺した友達、そして恩師との触れ合いを振り返る。
自分の中でもやもやしているものは何なのか。
その答えを知るべく、模索する。
他人であるがゆえに
「あくまでも他人なんだ」
死刑囚の死刑執行に立ちあったときのことを主任はこう話す。
被害者遺族ではないから恨んでいるわけではない。
強い感情でその行為をすることはできない。
他人であるからこそ、客観的に行動ができるわけでもある。
何事も明確に線を引くことは困難
「無理やりどこかで線を引いたとしても、その引いた線が、絶対に正しいものになることはない」
死刑になるか、ならないか。
その線は明確ではない。
時と場合によって変わってしまう。
明確に引くことは難しいし、引いたとしてもそれが正しいわけではない。
じゃあ何のために死刑はあるのだろうか。
自分の範囲の外側へ
「自分の好みや狭い了見で、作品を簡単に判断するな」
芸術作品を好む恩師はこういう。
それらに触れることにより自分の了見を広げていくことこそが大切なのだ。
好き嫌いではなく、触れることで何かを得る。
本当に素晴らしいものはそういうもの。
小説の魅力は生々しさ
「人間の精神内部で発生する葛藤や懊悩や混沌に対して、より鋭敏に緻密に繊細に迫れる点こそが小説の魅力」
解説の又吉直樹のコメント。
他の芸術と比べて小説の強さはここにある。
迫り、そして引かない。
中村文則の魅力もここにつまっているのだ。
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