【読書】生物と無生物のあいだ/福岡伸一 生命は秩序を持った動的平衡系
生物と無生物の境界を探して
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著者は分子生物学を専門とする大学教授。
生物と無生物はどこで区切られるのか。
科学と哲学の間を横断するような問題に対する解を探していく一冊。
生物学の発展を物語のような語り口で読ませてくれる本書。
博士たちの競争や嫉妬など生々しい場面も盛り込みながら、引きこまれていく。
自然は広大であり強大
「私たちが自然に対して何かを記述できるとすれば、それはある状態と別の状態との間に違いがある、ということでしかない」
自然は広大であり強大である。
元々存在するものとの比較をすることしか、我々にはできない。
自然に対して我々人間は到底無力であるということを身にしみて感じながら生きていくことが必要だ。
生命の根源にあるものは美しい
「生命現象に必要な秩序の精度を上げるためにこそ、原子はそんなに小さい、つまり生物はこんなに大きい必要があるのだ」
生命は秩序を構成している塊である。
一方、一つ一つの原子はブラウン運動のように好き勝手に動いている。
秩序などない状態である。
原子を寄せ集め、全体をひとつの系としてみた場合、平均的な振る舞いになる。
秩序だって動くために生物はたくさんの原子を集めているのだ。
一個体ではなく、動的平衡状態にあるという考え方が分かりやすく表されている一文。
「生命は、現に存在する秩序がその秩序自身を維持していく能力と秩序ある現象を新たに生み出す能力をもっているということになる」
生命は秩序である。
原子の行動の枠組みが生命である。
個体ではなく、場、プラットフォームが生命の根源。
それらが保たれる仕組みこそが生命。
一つが壊れても、周りがそれをカバーする相補性の塊。
人間社会のような光景が身体の中でも行われていることに驚き。
「動的平衡系は何とか埋め合わせをしてシステムを最適化する応答性と可変性を持っている」
「これは生命現象が時に示す寛容さあるいは許容性といってもよい」
生命の神秘を表しているといっても過言ではない、そんな一文。
人は一人では生きていけない。
互いに助け合いながら生きるために社会を作る。
それも一種の動的平衡を求めているのだと思う。
生命の根源にあるものは美しい。
自然から学ぶべきことはたくさんあるのだろう。
自然に対して傲慢であってはならない、常に謙虚であるべきなのだ、人間は。
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