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aichikenminの書斎

20代サラリーマンが、読んだ本と、心に残った言葉、その時考えたことを徒然なるままに書き留めたもの(金融、理系、工学、航空機、読書)

【読書】サクリファイス/近藤史恵 ロードレースチームのために犠牲になるアシストという役割

名言 小説

勝者は一人、だがチーム競技。それがロードレース

サクリファイス (新潮文庫)

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¥562から

アシストに与えられた使命。

それはエースに勝利をもたらすこと。
自分は犠牲になりエースを勝たせること。
それが自転車を漕ぐ理由。
陸上選手から自転車競技に転じた白石誓。
彼はプロのロードレースチームに所属し転戦していた。
彼のチームには絶対的エースが一人いる。
エースに見込まれ、白石はアシストとして重宝される。
自分が一番になるのではなくエースを一番にさせる、それが目的のアシスト。
白石はその立ち位置に非常に満足していた。
チームメイトからエースの黒い噂を耳にする。

 

彼は他人を蹴落としエースの座に立った、という噂だ。
そして蹴落とされた人間は車椅子での生活を余儀なくされている。
エースの座に就くためになんでもする、そんなエースだと。
様々な不安が残るなか、ヨーロッパでのレースに出る。
そこで起こった事故、果たしてそれは事故なのか事件なのか、犯人は誰なのか。
ロードレースの魅力とスリリングな人間ドラマを濃縮。
さらにはミステリーとしての仕掛けを備えた素晴らしき一冊。
ロードレースを知らない人間が、間違いなくロードレースにのめり込むであろう一冊。

エースを勝たせるという役割

「勝利というものの尊さ、敵である相手を賞賛する気持ち」
ロードレースで勝者となる人間はひとりだけ。
だがロードレースはチームスポーツである。
みんなチームのために走る。
チームは一人のエースを勝たせるために結成される。
エース以外の人間は全てアシスト。
そう、自分が勝つことは望んでいない。
他人のためにどれだけ自分の身を粉にして働けるか。
そこに尊さというものが出てくるのだ。
 

 

近づくことそのものが幸せ

「それでも、そこまで登れたイカロスは幸せだったのではないだろうか」
白石は考える。
自分は石尾に近づくために漕ぎ続ける。
漕いで漕いで漕ぎ続ける。
いつか、石尾に近づくために。
そして近づけなかったとしても、幸せを感じるのではないだろうか。
太陽に近づきすぎたイカロスのように。
そこまで人のために何かできるという類稀な経験を得るのだ。
 

真実を知ること≠幸せであること

「憎む相手なんかいない方がいいんだよ」
物語は一転、ロードレーサーたちの駆け引きからミステリーになだれ込む。
真実はどこにあるのか、そして明らかになった真実を伝えるべきなのかそうでないのか。
人間はどのような形で一番平和に暮らせるのだろう。
知りたくもない真実を知ることで人の心は汚れていく。
知らなくてもいいこと、知らないほうがいいこと。
それは誰が判断するのだろうか、誰が判断できるのだろうか。
 

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