aichikenminの書斎

20代サラリーマンが、読んだ本と、心に残った言葉、その時考えたことを徒然なるままに書き留めたもの(金融、理系、工学、航空機、読書)

【読書】リバース/湊かなえ 昔の事件が蘇る、そして浮かび上がる真実

暗い、重い、だけど癖になる

リバース (講談社文庫)

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藤原竜也主演で連続ドラマ化された本作。
読後に嫌な気持ちになるというミステリーの名手、通称イヤミスの女王。
本作の主人公は平凡なサラリーマン深瀬。
彼は自宅の近所にあるコーヒー店に通うことが唯一の楽しみだ。
そこで美穂子との出会いを経て彼の人生は輝き始める。
そんなある日、彼女の元に一通の手紙が届いた。
「深瀬は人殺しである。」

 

果たしてこの文面は何を意味するのか。
彼の過去に遡るリバースが始まるのだ。
彼が美穂子に打ち明ける真実。
そして、その裏に隠された本当の出来事が今明らかにされる。

人から認められること、人と群れることを好む群衆 

「人間の質というのは、友人の数で決まるのだと、誰に言われたわけでもないのに思い込んでいた」
人と人の付き合いというものは難しい。
友達の数で人間の価値が決まるとも思えない。
類は友を呼ぶ、しかしお互いを嫌い合うこともある。
難しいのは適度な距離感を保つこと。
そして周りに左右されないこと、自分の意思で考えることなのだと思う。
 

昔の思い出を振り返り、真実を見つけにゆく

「後悔という闇の中にたった一筋差し込む光」
深瀬は大学時代の友人が死んだ事故の事を打ち明ける。
果たしてそれは本当に事故だったのか。
深瀬自身も、徐々に不安になってくる。
そして真実がどこにあるのかを探しに出かけるのだ。
 

 

思わぬところで人と人は繋がっている

「俺たちは慎重に隠してきたつもりでも、あれをうっかりどこかで話したことがあるのかもしれない」
彼の友人達は極力その話題に触れないようにしていた。
事故当日、広沢が酒を飲んでいたこと・
自分たちに少しの責任があること。
それをひた隠しにしていた。
だが偶然誰かがそれを聞いたのかもしれない。
不安が不安を呼ぶ。
 

多様な視点から立体的に見えてくる人物像

「自分の中の広沢の姿がより立体化してきたことに充足感を得ていた」
深瀬は中学や高校時代の広沢の友人たちと会い、様々な証言を聞く。
それらの証言が広沢という人間を形作っていく。
その中には彼が知らなかったものももちろん含まれる。
そんな一面が広沢にあったのか。
そして浮かび上がった彼の一面が、深瀬の肩に重くのしかかる。
 

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