aichikenminの書斎

20代サラリーマンが、読んだ本と、心に残った言葉、その時考えたことを徒然なるままに書き留めたもの(金融、理系、工学、航空機、読書)

【読書】蜜蜂と遠雷/恩田陸 人間の才能と運命、そして音楽を描き切った

2017年本屋大賞そして直木賞のダブル受賞

蜜蜂と遠雷

新品価格
¥1,944から

この組み合わせで期待せざるを得ない。
ピアノコンクールを舞台に、人間の才能と運命、そして音楽を描き切った一冊。
ピアノコンクールにエントリーした天才たち、そして凡人たち。
本作は彼らの苦悩と成功を描く物語である。
ひとつのコンクールを通して人間は成長する。
一つの出会いを通じて人間は成長する。
何かひとつ、ほんのひとつのきっかけが掴めるだけで人は変わっていくのだ。
それを目の当たりにする本作である。

 

この本、読んでいたと思ったらいつの間にか音楽を聴いていた、そんな感覚に陥った。
なぜ文章を読んでいるのに、頭の中に音楽が流れてくるのか、不思議な体験であった。
流れるような文章と濃密な描写。
登場人物たちを通じた音楽の魅力を伝えてくれる。
語るべき魅力は沢山ある、だがとりあえず言いたいことは読んでほしいそれだけだ。

審査されているのは参加者だけではない 

「 先生からのギフトはもう手渡されてしまった」
巨匠のホフマンから託された恐るべき才能を持つ少年風間。
彼を審査することができるのか、彼の音楽を認めることができるのか。
そう問われているのは審査員の方なのであった。
そこまでの才能をもつ彼はいったい何者なのか。
 

 

本から音楽が聞こえてくる

「 観客は、その音圧に、飛び出してくる音楽に、吹き飛ばされまいと席で踏ん張って必死に耐えている」
不思議な表現だ。
だがそれが目の前に浮かぶかの如く存在する彼の力強いピアノ。
音楽というものがいかにして活字と結びつくのか。
それは、その答えは、ここにあるのかもしれない。
まさに目から聞こえてくる。
 
「その一瞬は永遠で、再現している時には永遠の一瞬を生きることができる」
風間は生け花を見ながらこう言う。
音楽もまた同じなのだと。
再現性という点で言えば、ほんの一瞬にしか生まれない。
それが音楽、しかしながら再現中は永遠を生きることができる。
一瞬を切り取り、そして外に連れ出すことこそが本当の芸術なのかもしれない。
 

「世界はこんなにも音楽に満ちている」

 

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