【読書】クリムゾンの迷宮/貴志祐介 50ページを過ぎたら寝られません
突如冒険に巻き込まれた人間たちの葛藤
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帯に書かれている言葉。
50ページを過ぎたら寝られません。
本作は、ページをめくる手が止まらないホラー小説である。
主人公の藤木たちは、知らない場所で目を覚ます。
ここは地球上なのだろうか。
見渡す限りの自然、そんな中で彼らは突如冒険をさせられる。
同じような境遇の仲間が何人かおり、彼らは自分たちが一人でないことに対して安堵する。
だがどうやらこれはゲームのようだ。
しかもそれは恐ろしいゲームである。
究極のデスゲーム、そして勝者と敗者が明確に決まるゼロサムゲームであった。
家庭用ゲーム機が映し出す言葉、火星の迷宮へようこそ。
ゲームは開始された。
同じ境遇にいる仲間たちはいずれ敵になる。
同じ人間たちの中で分裂してしまうのだ。
そして彼らは何を考えるのか。
そもそもこのゲームはどういう仕組みで成り立っているのか。
誰がゲームを操っているのか。
目的は何なのか。
ゲームに勝つこととゲームの外側にいる人間達にどう立ち向かっていくのか。
自分が生きるために。
人間らしさは非合理さ
「現実の人間は必ずしも合理的な行動はとらない」
ゲーム理論は所詮理論。
参加者全員がすべて合理的に行動するという仮定のもとに成り立っている。
それが現実に起きることはあり得るのか。
0ではないがそれは可能性が低い。
なぜならば人間は時として非合理な行動をするからだ。
その非合理こそが人間である証拠とも言えるのではないだろうか。
社会から見たら人一人などちっぽけなもの
「そんな自分を社会が見捨てるはずがない。いざとなったらきっとどこからか助け舟が現れるはずだって」
主人公は元証券マン。
彼は自分が真面目に勉強し、真面目に働き、その結果として恵まれた生活を送っていると感じていた。
だからもし彼が失業したとしても、社会が何とかして助けてくれるだろうか。
そう高を括っていたのだった。
現実は違う。
弱者は簡単に切り捨てられ、思い描いていた生活からは 大きく解離してしまった。