aichikenminの書斎

20代サラリーマンが、読んだ本と、心に残った言葉、その時考えたことを徒然なるままに書き留めたもの(金融、理系、工学、航空機、読書)

【読書】満月の泥枕/道尾秀介 大切な人を失った時どう生きるか

肩肘張らず、のびのびと

満月の泥枕

新品価格
¥1,836から

娘を失った男、母に捨てられた少女、二人はろくでもない生活を送っていた。
酔っ払った男がある日、目撃する。
公園に人が沈められたところを。
沈められた男は誰なのか、泥酔していた彼には定かではない。
ワケありなアパート住人たちのドタバタ群像劇。

 

大切なものを失った後に、人がどのように生きれば良いのか。
主人公の二美男はかっこよくない。
かっこよくないんだけれどもかっこいいんだ。
笑って、泣いて、その狭間を行き来する。
まさに道尾作品なのではないだろうか。

適当な発言をする適当な男

「ほらおかしいだろよ。人が殺されて、池に放り込まれるところを見て、何で二度寝するのよ」
二美男は殺人事件の現場を目撃する。
だが、それは夢なのか現実なのかわからない。
なぜなら酔っ払っていたから。
この一文が本作を、明確に表すものだと思う。
適当な人間が、適当なことを言う。
その結果ドタバタ劇が生まれ最後に丸く収まる、美しい。
 

 

気になるから、それで命がけで動くのだ

「気になるもんで」
ドタバタに巻き込まれた二美男たち。
自分たちが関係ないことに気付いた後も、優しい彼らは人に手を貸すのであった。
それは何故か。
理由なんてない。
あえて言うとすれば、ただ単にそれが気になるからだ。
そんな手と手を取り合うような優しい世界に自分たちは生きていたいと思ってしまう。
 

優しさと気の使い方

「気い遣うとか遣わないとか、そんな難しいことじゃなくってさ、ただしってるってだけだよ」
人が他人の弱みを知って、あえてそこに触れないようにする。
それを人は気を使うと表現する。
だがそういう関係ではなく、ただ知っているだけ。
気を使う事はなく、ただただ知っている。
その言う人間が周りにいることで人は反省するのだ。
壁を作るのではなく、その内側に入っている様な、そんな関係なのだろう。
 

責任感、義務感

「それでもなにかの形で罰を受け続けなければならなかった」
昔失敗をした男。
彼は自分が幸せになることを是としなかった。
自分は罰を受けなければならない。
その意識が強すぎるゆえだ。
もう少し肩肘張らずに生きていけばいいのだ。
その人が罰を受けたところで何かが変わるわけではない。
 

関連記事