【読書】教団X/中村文則 目を背けてはいけない
目を背けてはいけない
書店に平積みされ、圧倒的な存在感をはなつ。
あまりの分厚さに気後れしながらも、帯のワードたちに引きこまれた。
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現代社会に蔓延る様々な問題について、考えるきっかけをあたえてくれる本。
主人公があるきっかけからカルト教団に興味をもち、徐々にのめり込む。
登場人物たちの重みのある言葉。
考えなければならないことであるが、目をそむけがちなこと。
そういったものに対する警鐘をならしてくれているのではないだろうか。
いつの間にか渦中の真っ只中に。
心に突き刺さる名言が本当にたくさん。
信じることの意味とは何か。
「人間は大きく二種類。揺れを楽しむことができる人間と深く考えることを避け自己を守る人間」
自分の価値観・考えを曲げることのできない人は、怖さゆえ無視・無関心という反応をする。
考えを持つことは大事だけれども、それに固執しすぎてはいけない。
聞く耳を持たないことは、視野の狭さの現れである。
フラットな状態で価値観を受け入れ、納得できるものであれば取り入れる。
柔軟さというか、バランス感覚というか、そういったものが生きていくには必要なのだ。
「本当に何かを発言しなければならない貧国野村にネットなどない」
自分の世界を広く、地球規模で考えなければセーフティーネットは機能しない。
自己満足では意味が無い。
日本という恵まれた国に、自分が今いるという状況を当たり前だと思わずに謙虚でありたい。
「国は内政が行き詰まると大抵国民の目を外に向けさせ、一体感を与えようとする」
敵の敵は味方。
気づかないうちに、徐々に飲み込まれているのでないか。
政治がいま動くのではないかという恐ろしさに、この言葉が実感となってしまわないことを祈る。
「戦争は常に、相手に先にやらせてから始めるものだ」
理由付け、言い訳をつくる。
権力にはこういう考えが伴ってくる。
後出しじゃんけんという暴力。
「我々がしなければならないのは、神の名を語り人間の殺害を要求する連中と、あの全体主義による気持ちがいいという状態を、人間史から駆逐すること」
目を開いて、目の前をみる。手の届く範囲に目を凝らす。
地に足がつかない状態では何もできない。
何かを教えてくれるわけではなけれど、人に考える種をくれる。
至る所に情報が溢れている現代の社会において、思考停止が脅威。
ググるだけではなく、ググった後に、自分で考える事が必要なのだ。