【読書】告白/湊かなえ ドロドロと黒い物語、しかし読むのを止められない
教師は犯罪者に呪いをかける、言葉という呪いを
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中学校の女教師、彼女の子供が校内で死亡した。
彼女は言う、娘は死にました。
しかし事故ではありません。
このクラスの生徒に殺されたのです。
この告白により物語はスタートする。
語り手が徐々に変わっていき、様々な視点から語られることによって事件の全体像が明らかになっていく。
重たい暗い、でも止められない。
恐ろしい魔力を持った作品だと僕は思っている。
他者からの評価を気にしすぎ
「同じ事柄でも、考え方ひとつでどうにでもなる事は世の中にたくさんあります」
人間は自分の捉え方次第で気持ちが変わってくる。
何が正解で、何が間違いなのか。
そんなものはあまり関係ない。
周りがどのように考えているのか。
周りの顔色を伺いながら自分の反応を決める。
自分というものが極力排除された、客観的な世界。
もう少し自分の主観を持ってもいいんじゃないかと思ってしまうのだが。
本当の罰とは何なのか、誰が決めるのか
「一番残酷な判断を下すであろう人たちの中に、あなたたちを放り込みたかったからです」
世間は少年少女に甘い。
世論というものはある程度、自重をしながら守ってくれる。
子供だからしょうがないじゃないか、そういうふうに考えてくれる。
しかし少年たちのコミュニティではそれが全く働かない。
彼らは物事を深く理解していないがために、どんどんエスカレートする可能性をはらむ。
その結果一番辛い罰になるのかもしれない。
責任転嫁、それは大人でも
「あなたたち子供は すぐに責任転嫁をしてしまうので私のせいだとは言いません」
自分のせいじゃない、自分の責任じゃない。
それを誰かになすりつけることは、とてつもなく楽なことだ。
その結果として、何かが起こったとしても逃げ切れるからだ。
答えは与えられるものではない
「最終的に何の救いも解決も示すことなく、バサッと終わらせている」
今の社会、ほとんどの人間がすぐに答えを求めようとする。
原因と理由とリーズナブルな答え。
それに対する反論として、このようなスタイルを取っているのかもしれない。
自分の中で考えろ、自分自身で背負いなさいという著者からのメッセージかもしれない。