aichikenminの書斎

20代サラリーマンが、読んだ本と、心に残った言葉、その時考えたことを徒然なるままに書き留めたもの(金融、理系、工学、航空機、読書)

【読書】空の境界(下)/奈須きのこ それはほんとうに。夢のような、日々でした

普通の人には何でもないような日々

下巻には、第六章の忘却録音と第七章の殺人考察(後)。

空の境界(下) (講談社文庫)

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第六章、忘却録音

第六章では、黒桐幹也の妹、鮮花が学園で起こった事件に関して式とともに調査を行なう。

学園内で起きた事件には魔術師が関わっていた。

彼が集めているものは記録。

忘却された他人の記憶を集めることを目的とする。

人は健全な精神を保つために忘却するが、それを再度突きつけられることになる。

 

また、第六章では、式と鮮花の意外な仲の良さが印象深い。

 

「流れない空気は淀んで、沈殿する。」

鮮花が住んでいる学園は、全寮制であり、外部から隔離されている。

守られているといえば聞こえは良いが、ただの檻にも見える。

俗世間の不浄に触れることはないが、その中の空気も淀んでしまう。

小さな共同体の中で生きると、様々な物をうばわれてしまう。

自由だけでなく、自分の考えも。

 

 

「そんなものは本と同じですよね」

知識はあるが、自分で考える事ができない。

そういうものの例えとしての言葉。

確かに、本にはたくさんの知識がつまっているが、本自身はそれを使って何かができるわけではない。

本を読んだ人間が、それを使って考え、事を為すのだ。

考えない人間は、本と一緒である。

ならば、本を買えば事足りてしまう、そんな価値になってしまう。

 

第七章、殺人考察(後)

第七章では、殺人考察(前)の続きとも言えるお話。

殺人考察(前)では式が交通事故による昏睡状態に入る前の物語が語られる。

殺人考察(後)では、昏睡から目覚めたのちに、再び起こる連続殺人事件が主題。

殺人現場で目撃される着物をきた人影。

突如、幹也の前から姿を消す式と現れる先輩。

 

第二章で不完全な形で終わったものが徐々に明らかにされていく。

ともに支えあい生きていく物語

 

「自分がまかないきれる感情の量は決まっている」

自分の感情があふれるほどのものに接した時、人はそれを排除しようとする。

忘れたり、離れたり、消したり。

人によって器の大きさは変わってくる。

 

「それはほんとうに。夢のような、日々でした」

式の心からの言葉。

自分が異常である事を理解し、常識的な生活はできないのだと諦めていた式。

そんな式を常識の範囲に連れて行ってくれる幹也との出会い、そして生活。

新しい風景を、景色を見せてくれた、そんな日々。

普通の人にとってはなんでもない日々。

 

「人が真の世界、真の私を求めるのは、たんに卑俗な現実世界に耐えきれないからにすぎない」

 

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