【読書】カイの悲劇/森博嗣 天才の天才たる由縁、それが絶対
過去から現在そして未来へ、人は生きていく
真賀田研究所でプログラマーとして働いていた島田。
今は香港を拠点とする会社で働いていた。
人工知能に関するエキシビジョンの日、島田は遠田と言う男に航空機事故に関する質問をされた。
その後、トラムの中で彼は殺された。
その背後に感じられるのは大きな陰謀。
密室の中で殺人を犯したのは誰か、疑われたのは誰か。
背後に動いている陰謀は誰が仕掛けたのか、そして追っている人間は誰なのか。
徐々にリンクしてくる物語。
他の物語たちとどのように繋がっているのか、それも今後楽しみである。
所詮は相対評価、絶対値を持っている人間は稀だ
「あっと言う間に職場の環境が変わってしまい、彼女が持っている技術が相対的に古くなってしまった」
技術というものは古くなる。
新しい技術が出てくるから、古くなるのだ。
世の中は絶対ではなく、相対で動いている。
変化を恐れていては、新しいものは出てこない。
新しいものを学ぶ、新しいものを作るという姿勢こそが常に求められる。
それはどこで働いていても同じであろう。
時間の経過、周りの変化は予測できない
「たくさんの仕事をしたけれど、それらは果たして本当に社会の役に立ったのだろうか」
島田は過去を振り返ってこう考える。
その一瞬、その場で、役に立ったことはあった。
だが、少し時間が経過するとたちまち 陳腐化してしまう。
ハードでも、ソフトでも、すぐに使えなくなってしまう。
それは自分が作り出したものに対し、劣化するという特性がデザインに盛り込まれていないからだ。
他人を気にすること、それがもはや凡人なのだ
「天才とは儚いものだとみなが語った、そして自分たちの社会を守ろうとした。 天才は寂しいものだとみなが感じた、そうすることで自分達を慰めたのだ」
真賀田四季に対して世間の評価はこうだった、初めは。
自分とは違う、虚しさを持っている、ということにして、自分と差別をした。
差別をすることによって、自分たちと比較されるのを防いだのだ。
だが本当の天才はそんなことを1ミリも思ってもいないし考えてもいない。
それだけ自分に自信があるから。
凡人は他人との比較で生きていく、天才は自分自身で生きていく。
その違いすらわからない程度に凡人なのだ。