【読書】女王はかえらない/降田天 学校という水槽の中でつくられるヒエラルキー
学校という水槽の中で
このミス受賞作が文庫化。
【2015年・第13回『このミステリーがすごい!大賞』大賞受賞作】女王はかえらない (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) 新品価格 |
学校という社会につくられるヒエラルキー。
その中の頂点立つ少女が転校生によりその地位を脅かされる。
独裁から一転、どちらにつくかの選択を迫られるクラスメイトたち。
教室という牢獄の中で、逃げることのできない恐怖から、
精神を病んでしまうものもあり、そして担任も然り。
その後、事件は起こる。
あっと驚かされる仕掛けが至る所に存在する。
最後まで読んだ後、ページを見返すこと必死。
学校というところは逃げ出すことが非常に難しい。
子供だから視野が狭くなりがちで、教室で起こることが全てだと感じてしまう。
そして大人たちも子供の残酷さを直視できないことも多い。
挙句の果てに、教師に過度に責任を押し付けるモンスターペアレントも現れる。
学校とは、仲の良い友達が出来る所でもあり、恐怖の対象となる可能性もある、そんな所。
「ぼくらに似てると思ってさ。水槽の中で共食いする子どもたち」
主人公のクラスメイトの発言。
クラスの中で、互いを傷つけ合う様子を皮肉を込めて。
逃げ出すことができないという印象を水槽という例えがすごい。
ヒエラルキーって怖い。
「先生はそっちを見ようともせず、自分が踏み倒したヒマワリを起こし始めている。」
教師が生徒たちのことを直視できていない、そんなことも多い。
思った以上に子供というものはずる賢い。
人は時として、自分の信じたいものだけしか見えなくなってしまうこともある。
「クラスのほとんど全員が、彼女に悪意を、あるいは考えなしの残酷さを向けている。」
いじめに加担する者はもちろん、それを見て見ぬふりをする者も同罪。
その雰囲気の異常さを、この本は臨場感あふれた文章力によって伝えている。
加害者にも、被害者にもなりたくない、そうありたいからこそ、見て見ぬふり。
そういった強い閉塞感のある場所になってしまう学校。
本来は教育を受けるところであるが、いつの間にか上手い世渡りの仕方を学んでいるのかもしれない。
「気を遣いながら会話をすることに強い疲れを覚える性質なので、友人が極端に少ないのだろう」
大人になると知らず知らずのうちに身に付ける能力。
それが嬉しいときもあるが、人の本質に触れることはできない距離感も生んでしまう。
大人になってから知り合った人は、なかなかよそよそしさが抜けない。
逆に、小さい頃からの友人とは腹を割って話しやすい。
だからこそずっと仲良くできるのかもしれない。
知り合いではなく、気の置けない友達をたくさん作りたいものだ。