【読書】ジョーカー・ゲーム/柳広司 緻密な論理戦、考えない駒になってはいけない
スパイの生き様に魅了される
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陸軍内に極秘裏に設立されたスパイ養成学校「D機関」。
彼らは戦時中に暗躍する。
自分の任務を遂行するために、全く知らない人間になりすまし、全く知らない場所で暮らす。
スパイは疑われた時点で敗北が決まっている。
軍人の場合は、疑われたら自決する。
だが、スパイの場合は死んではいけない。
なぜなら死の周りには、必ず調査が入る。
調べられて困るのは、スパイの側であるから。
軍人とスパイとのこのような確執は非常に多い。
無意識化まで信じるように育てられた天皇陛下への忠誠。
だが、スパイは論理的でなければならない。
何かに囚われていては本質を見ぬくことはできない。
考えることをやめてしまったらその時点で任務など到底できようもない。
そんな周りとの隔たりを感じながらも、強く生きる彼らの生き様に心打たれる。
スパイが持つのは強靭な精神
「そんな生活に、なぜ耐えられる?」
スパイ養成学校の生徒たちを評する軍人の言葉。
D機関に属するものたちは、経歴や名前さえも偽り。
横のつながりなぞ全く無い。
そして一人二人と任地に赴く。
だれにも知らされること無く。
通常の精神を持つ人間にはおよそ耐えることができないであろう空間で生きる彼ら。
駒にはならない
「ただ、駒として使い捨てられるのはごめんだ」
軍人は集団の中の一つのピースである。
だから使い捨てられるのは当然、この発言をした佐久間も始めはそう思っていた。
だが、D機関のスパイと行動をともにする内に、彼にも芽生える。
自分の頭で考えなければならないという焦り。
頭の中を空っぽにすることは簡単だ。
何も考えなければいい、言われていることだけをすればいい。
だが、それは駒以上以下でもない。
スパイには休みがない
「彼らは役割を離れ、元の自分自身に返っているのだ」
通常の職業であれば、会社を離れれば、その人自身の役割から離れることができる。
会社にいるときは会社員、休日は会社員ではない。
だが、スパイは違う。
片時も職務から離れることはできない。
つまりは心安らかに過ごせる時間が全く無いということ。
週休2日って少ないと感じていたが、そんなことは全く無いのだなぁ。
名目ではなく本質を見る目が必要
「つまらぬ肩書きにとらわれるな」
「そんなものは所詮、後から張り付けた名札にすぎない」
「何かにとらわれて生きることは容易だ。だが、それは自分の目で世界を見る責任を放棄することだ。自分自身であることを放棄することだ」
人間の本質はどこにあるか。
それは自分の目で見て、耳で聞き、考えることであろう。
何かを鵜呑みにするのではなく、考えたうえで納得すること。
これはスパイでなくても同じであろう。
知らず知らずのうちに機械と同レベルにまで落ちている自分はいないだろうか。
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