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aichikenminの書斎

20代サラリーマンが、読んだ本と、心に残った言葉、その時考えたことを徒然なるままに書き留めたもの(金融、理系、工学、航空機、読書)

【読書】怒り/吉田修一 人を信じきることはできますか?

名言 小説

信じること、信じきること

殺人事件が起こり、犯人は逃亡中。

見つからないまま1年が過ぎる。

 

そんなとき、身元のわからない男が3人現れる。

それぞれ別の場所で、別々の生活を送っている。

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物語は4つに分かれて進む。

犯人を追う刑事とその周辺、港に現れた男の周り、沖縄の無人島にいる男の周り、

そして東京にいる同性愛者の男の周り。

それぞれ別々の生活をおくっており、繋がりもないのだが、

未解決事件の公開捜査が彼らに変化という石を投げかける。

 

果たして、自分の周りにいる身元不明者を信じることができるのか

疑わずにいられるのか。

あざなえる縄のごとき物語

一気に最後まで読めてしまう。

映画化もされるらしい。 

ikari-movie.com

 

 

「幸せを知っている人間は、子供たちにも幸せがどんなものか、きっと教えてあげられるよね」

人にものを教えるということは難しい。

教育者はすごいと思う。

自分の価値観の押し付けにならないように、でも手を引いてあげなければ子供は前に進まない。

そして、幸せがどんなものか、教えてもらっても子供はわからないかもしれない、その時は。

僕も何が幸せかと問われれば、明言するのは難しい。

ただ、今日と変わらない明日が来ればいいのにと思えたとき

今、自分は幸せだと言えるのではないか。

そう思っている。

 

「バカみたいだからと思いながらも、そんなバカみたいな時間を繋ぎ合わせているような生活がいとおしかった」

特別な一日というよりも、何気ない会話や些細な事で笑い合える日常。

そういうものが一番の幸せなのだろう。

あって当たり前の大切なものは、失って初めて気づくという。

失う前に気づきたい。ありふれた日常がどれだけ幸せなのかを。

 

「自然と自分の気持ちや思いを口に出さなくなり、それに慣れ、気がつけば出せない人間になっていた」

僕自身、人見知りな人間で、自分のことを話すのが苦手だ。

なぜ人見知りなのかと考えると、嫌われるのが怖いから積極的になれない。

自分のことを話して、相手に嫌われたら、自分自身が否定されたような気になる

それを恐れているんだろう、きっと。

いざ文字に起こしてみると、客観視できるものだ。書いてみてよかった。

 

「俺はお前を疑っていると疑っている奴に言うのは、
俺はお前を信じていると告白しているのと同じことなのかもしれない」

疑うことと信じることは表裏一体。

どちらの側面から見るのかによって変わるだけ。

信じると言われて、言葉通り受け取れるものか、悩んでしまうかもしれない。

 

「自分の大切な人の大切な人を大切にする。とてもシンプルなことだが、実はそう簡単ではない。」

人を大切にするということは、その人をどこまで包み込むことができるかということ。

大切な人の大切な人まで包み込めるほどの包容力があるかどうか。

こう考えると、包容力って良い漢字が使われているんだな。

 

 

「何かに怒ったところで、結局その状況は良くならないと思っている(中略)すべてを諦めてしまった人間のような・・・」

何に対して怒っているのか、あまりに大きいものに対しての怒りというものは、
時に虚しさを感じさせてしまう。

自分一人が行動しても、会社は変わらない、まして社会など変わるわけもない。

そういった諦めに似た思いが、今の日本には漂っているように感じる。

自分の無力さを過度に卑下し、行動することすらみっともないと思ってしまうような、

そんな陰鬱な空気が。

 

「世間はほら、いつまでもそういう目で見るから」

不幸だった少年は不幸なままを求める。

でも世間は、所詮他人だから。

彼らの思い通りになってやる必要なんて無い。

テキトーにあしらっとけばいいんだよ。

 

「本気っていうのを伝えるのが一番難しいんだよ、きっと。
本気って目に見えないから」

伝えることの難しさ。

本気で頑張る人間を応援したいし、国も応援して欲しい。

だけどどうやって本気な人間を見極めるのか。

それが問題だ。

 

「大切なものは増えるのではなく、減っていくのだ」

大切なものができるということは、今まで大切だったものが大切ではなくなるということ。

予定を詰め過ぎることが、他人と常に連絡を取り合っていること。

よくある光景だが、友達としゃべっているのに、LINEで別の人と連絡をとりあっていること。

だけど、それは大切なものをまだ探している途中だということにほかならない。

 

「子供の目なら真実が見えるような気がしたのかもしれない」

年をとるうちに、いつの間にか偏見や無駄なプライドが邪魔をして、

本質を見ることができなくなってしまう

キラキラと目を輝かせている大人に会えるとうれしくなります。

 

「目をつぶろうとしていたのは、この事件にではなく、
自分や愛子の、期待できそうにない人生に対してだったのではないだろうか」

あるものを見ないこと。

目を背けることで本当に隠したいものはなにか。

背けていいものと、いけないもの

自分はきちんと区別できているだろうか。

 

「彼らは必死に自分が信じる行動をしたのだ」

個人個人が他人のためを思い、必死に行動したことが、いろいろな結果を生む。

俯瞰している読者だからこそ、わかること。

実生活でも、そうなんだろうな、俯瞰できていないからわからないだけで。

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