【読書】本屋さんのダイアナ/柚木麻子 周囲の押しつけや思い込みという呪いから解き放つ
ガール・ミーツ・ガール小説
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本以外に友達がいなかった少女に初めて友達ができる。
二人の少女の心の触れ合い、足らないものを補いあい、時に確執を生じる。
幼い彼女らが、少女を経て、大人になっていくまでを描く本作。
お互いに無いものを相手に求める。
お互いの家族を羨ましく思う。
相手の家庭に生まれたらどんなに幸せか、想像ばかりする。
ふとしたことで仲違いをし、10年以上も音信不通。
再び会うとき、彼女らはどれだけ成長しているのだろうか。
自分の殻を破った時、真の友達になれるのだろう。
若さゆえの失敗もあれば、大人びた考えもある。
難しい青少年時代を巧みに描く。
本に潜む魅力
「なんだか違う世界に行けるみたいで」
小学生のダイアナが、本を好きな理由を聞かれた時に答えた言葉。
本は視点を与えてくれる。
世界を与えてくれる。
自分とは違った生き方や考えに触れ、別の世界に入ることすらできる。
共感して楽しいという感想以外にも、新たな発見をする面白さが存在する。
本質を見ないで表層だけを見る
「人の中身を見ずに、外見や親の職業で判断するようなのばっかり。自分たちは絶対正しいって思い込んでて、そのくせ狭い世界から出ようとしてない弱虫の集まりだよ」
名目やレッテルにより人を判断するのは簡単だ。
なぜなら、自分で考える必要がないから。
自分で考えて、導いた結論に対して責任を持たなくていいから。
だが、そんな思考が止まっている世界が楽しいのだろうか。
自分が付き合う相手すら自分の考えで選ばないのだろうか。
考えるという行動が自然にできなければおかしいのだ。
「そう、名前とは、人生の道しるべになるのだ」
主人公のダイアナは自分の名前にコンプレックスを有する。
いかにその名前のお陰で人からいじめられたか。
それが原因で自分の卑屈な性格が形成されたのだと。
だが徐々に彼女の考えは変わってくる。
それだけじゃない、むしろ名前のせいにして逃げている自分がいるのだ。
我々もそういうことをして逃げてはいないだろうか。
一歩踏み込む力
「誰かに何かを与えてもらうのを待つんじゃなく、欲しいものは自分で掴んで欲しいんだ」
人は何かに甘える事が多い。
例えば親に、友達に、同僚に、先輩に、会社に。
無条件で甘えていいのはどこまでだろうか。
例えば自分のやりたい仕事を待っているだけでいいのだろうか。
自分から取りに行くことが必要なのだろう。
自分では届かないかもしれない、だけれども、手を伸ばしていく。
主体的に取った行動というのは自分のモチベーションを上げることにも繋がる。
行動することがいかに大事か、小さな少女に教えられる。
「ロータリーを足早に行き交う人々は、誰もが目的を抱いて、目指す場所へと進んでいるように見える」
「もっと堂々と落ち着いて振る舞って欲しいんです」
東京は歩くスピードが早い。
皆、誰もが目的を抱いて歩いているからだろうか。
そんなことはない。
むしろ、急いでいる自分を演出しているのだろう。
他人に影響されながらも、自分を守るために。
なぜかそんな人々を羨ましく思うダイアナがいるが、そう考える彼女の方がずっと大人であるし、思慮深い。
自分に自信を持つことが一番なのだ。
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