【読書】その女アレックス/ピエール・ルメートル 被害者不明の誘拐事件
女はアレックスというのだ。いや、アレックスといったのだ。
新品価格 |
一人の女性が誘拐される。
誘拐が発覚したのは目撃者がいたから。
監禁場所が見つからない。
だが、誘拐された女性の身元がわからない。
だれも捜索願を出さないのだ。
被害者は誰。
加害者の側から判明し始める。
疑われたのは中年の男性。
警察に気づき彼は逃走、そのまま飛び降り死んでしまう。
女性の身元と監禁場所は依然として不明。
加害者は被害者の女性と交際していた男の父親だと判明する。
その息子は現在行方不明。
捜査を重ねる内に、息子の死体が発見される。
女性が暮らしていた場所で。
女性の身元が判明したかに見えた。
そして彼女は硫酸を使用する殺人犯かもしれない。
被害者が突如、加害者に代わる。
捜索ののち、女性の監禁場所が偶然判明、そこに行ってみると既に脱出した後であった。
彼女はどこへ行ったか、なぜ逃げるのか。
どんでん返しを楽しむストーリーかと思いきや、最後は複雑な気持ちになる。
ただの殺人鬼でしかないと思っていた人間が、実はそこに至るまでちゃんとした理由があった。
加害者は被害者でもあった。
そんなときに、人間はどういう判断をするのか。
何が正しいのか。
復讐というものに対してアレックスは問いかけを放つ。
使い分ける顔
「長年仕事を共にしてきた仲間のこととなると、こいつのことはなんでも知っていると思い込みがちだが、実は何も知らないのだ」
仕事の顔とプライベートの顔は往々にして異なる。
仕事をするときは、仕事モードの人間になる。
昔は職場が家族だったと言われているが、いまはもうそんなことはない。
過度な付き合いはなくなっているが、逆に言えばドライな関係になっているのだ。
会社と従業員の関係性も。
焦りが生まれるものは少ない
「もっとも優先すべきはなにもしないことである」
やるべきことが多すぎるとき、何から手を付けていいのかわからないとき。
職場でもたまに出会う光景だ。
そんなとき、何からやったらいいのだろうか。
カミーユ刑事はこう言っている。
頭をすっきりさせて落ち着くことが重要なのだ。
忙しぶっている人が多すぎる。
あえて見ないのは逃げているだけ
「あれこれ迷うのは、議論の余地のない選択をごまかしの理屈で覆い隠して、見ないようにするための手段にすぎない」
世の中には避けられないものがある。
あれこれ理由をつけて、そこから遠ざかることはできる。
見ないようにしているだけだが。
どうせ避けられないのならば、いつ覚悟を決めるかだ。
サスペンスから問いかけられる社会正義
「われわれにとって大事なのは、警部、真実ではなく正義ですよ」
人が人らしくあるために、何をするべきか。
最後にこの小説は問いかける。
法律は人間が作ったもの。
人間が作ったものだから完璧ではない。
どちらに手を差し伸べるべきか。
簡単に答えはでない。
関連記事
aichikenmin-aichi.hatenablog.com