【読書】人工知能と経済の未来/井上智洋 汎用人工知能の普及の果てに訪れる世界は
AIの成長により必要になるBI
刺激的なタイトル、そしてAIからBIという言葉
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AIはもちろん人工知能。
だが、BIとはなんだろうか。
それはベーシックインカム。
全国民に一律給付する年金のような仕組み。
著者は、AIに仕事を奪われた人間が豊かに生きるためには、BIの仕組み有益であるという。
AIは勝手に仕事をしてお金を稼ぐ。
稼いだお金はどこに行くのか、それはAIを活用している企業である。
企業が稼いだお金は、株主に配当を経由して還元される。
株主だけは裕福になる。
働く労働者は働き口がなくなるためにお金を稼ぐ手段がなくなる。
この二極化を避けるための手段はベーシックインカムであると。
AIはとてつもなく凄いわけではない
「知性の大部分を超えるというのと全てを超えるというのでは、天と地ほどの違いがあります」
AIは知識量、計算速度など各分野において人間を超えることはあり得る。
だが、すべての分野において人間を超えるというのは考えづらい。
なぜならAIは身体を持っていないから。
例えばレーシングカーが人間の100倍のスピードで走るとしても人間が支配されるわけではない。
作っても、全部は売れない
「技術進歩が雇用を減少させないとすれば、それは需要が増大する場合に限られます」
技術が進歩することで、生産能力が向上する。
生産したものが売れさえすれば、そのまま雇用が拡大する。
だが、売れなければどうだろうか。
経済学は得てして供給側しか見ていない事が多い。
作ったら売れるという前提があってこそ。
政府による産業への過剰投資
「政府はAIの産業育成ではなく、新たなAI技術を生み出す研究開発の促進にこそ力をいれるべき」
産業育成の過程においては、儲かるのであれば民間投資が行われるので政府の支援など必要ない。
本当に必要なのは研究開発の過程である。
研究開発は芽が出るまでかなりの時間を有する。
それまで見据える投資が民間には難しい。
だからこそ、将来への投資をするのは政府の役目なのだ。
労働者がいなくなる未来
「労働者階級は賃金が得られなくなることにより消滅し、資本家階級が全てを手にすることで資本主義が終焉します」
AIの発達により失われるのは労働者階級の仕事。
仕事をしなくてもお金がもらえるような、不労所得を有している資本家だけが得をする。
そんな世界になる前に、何か手を打たなければならない。
最も、働くことを過度に礼賛する社会になりすぎているのが原因の一つとも言える。
働かなくても幸せに暮らせればいい
「私たちが自らについてその有用性にしか尊厳を見出だせない哀れな近代人であることをあらわしています」
人間から労働を奪う。
このフレーズに違和感を抱いたことはないだろうか。
働かなくても生きていける、好きなことをしていればいい。
そんな幸せが訪れることに対して、なぜ怯えるのだろうか。
それは自分が有用であることに対して価値を見出しているから。
むしろ有用でなければ人間としての尊厳がなくなるというレベルで物事を考えているから。
このような認識を有する近代人は、資本主義が生み出した産物なのだろう。
もっと緩やかに生きていければいいのに。
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